人間なので、仕事をしていると必ずクレームは起きます。
大企業になると、クレームや不祥事は大きく報道され、経営に大ダメージを与えてしまいます。
だから、中小・零細企業には考えられないほど防御力が高いです。
一つの広告を出すのに、広告チェックに20人以上が1カ月近くをかけて検印を捺していく。
私たちからすれば「なんだか無駄な作業」に見えますが、大企業にとってコンプライアンスは最も重要な位置付けなのです。
私たちがクレームに対してできること

そんな防御力をつけるなんて中小・零細企業には無理です!
むしろ小さな企業や店は私の経験上、
「クレームは最大のチャンス!」
と捉える方がポジティブに仕事に取り組めます。
「えっ、どういうこと?」という方のために、
私の師匠が仕事を始めてすぐのころに遭遇した、クレームの経験談をします。
新人営業マンの苦難

師匠が最初に勤めたのは広告の会社でした。
この会社では、営業に慣れさせるために、新人は年に1回発行する「街のガイドブック」の広告営業を行っていました。
「新人さん、これ営業しといて!」
先輩から手渡されたのは、過去に広告の取引があった顧客リストでした。A4用紙で5枚分、200店ほどのリスト。
「そこに載っている店は、もう誰も行っていないから、自由に営業してもらっていいよ」ということ。
先輩から指示を受けた師匠は、顧客リストをもとに、毎日およそ15件ずつ訪問していきます。
「お世話になります。○○社の○○と申します。新人です、よろしくお願いします!」
「あー、○○社か。久しぶりやな。昔、広告出したことあるわ~。最近は誰もけえへんけどな」
「す、すみません!」
「おねえちゃん、新人か? 頑張りや」
「あ、ありがとうございます。え~っと、今日は、、、無料の街のガイドブックを4月に発行するので、この中でお店を紹介してもらえないかな、と思いまして」
「へーっ、いくらすんの?」
「一番小さい枠が1万円で、中くらいの枠が3万円、大きい枠が5万円です」
「ほな、1万円で。おねえちゃんが来てくれた記念や」
「あ、ありがとうございます!!」
入社後すぐにクレームに遭遇
毎日そんなやりとりを繰り返しながら、ある日、リストにあったペットショップのミニーさんを訪問したときのことです。ここでクレームに遭遇したのです。
ミニーさんは、女性オーナーが数人のトリマーをスタッフに抱え、経営しておられました。
師匠は何も知らずに、いつものようにご挨拶して、ガイドブックの説明に入りました。
その説明の途中で…
「おたくとは取り引きしないって、以前お伝えしたはずですが」
一瞬、時が止まりました。感情的な口調ではありませんでしたが、とても怖かったそうです。
でも勇気を出して尋ねました。
「申し訳ございません。私は新人なので存じ上げませんでした。もし、よろしければ何があったかを教えてもらえませんか?」
「……………」
「…あなたの会社に○○っていう人がいるでしょ。広告費を支払った、支払っていないでもめたことがある。結局、支払いはされていたのだけれど、それまで相当疑われた。なのにその後、謝りにも来ない。だからおたくの会社は信用できません。だから、広告もしません」
女性オーナーはそう言いながら、ガイドブックの企画書を突き返してきました。
「そうだったんですか。申し訳ありません」
師匠はそう謝罪して店を後にしました。
この時先輩が考えたこと

相手が不愉快になったのは、新人の自分のせいではありません。
希望を持って社会人になったのに、自分がこれから働く会社が、人に嫌われたままでいるなんてすごく嫌。
その感情が抑えきれなかったそうです。
「よし、信頼を取り戻すために自分に出来る限りのことはしよう」
師匠はそう決意されました。
経営視点では「顧客は無数にいるんだから、いちいち対応するのは時間がもったいない」というのが正義なのかもしれません。でも、師匠は「人間同士の関係を大切にしたい」、青臭いと思いますが、その純粋な気持ちだけがクレーム対応の原動力になったそうです。
その後も訪問は続く
師匠は勇気を振り絞って2回目の訪問をします。
女性オーナーからまた、同じ話をされます。
「この前も話したでしょ。口では何とでも言えるけれど、おたくの会社がそういう行動をとったのは紛れもない事実。もう信用できません」
「申し訳ありませんでした」
1週間ほど経ち、やはり「嫌われたまま」というモヤモヤが気になった師匠。
そして、ミニーに足が向きます。
「本当にご迷惑をおかけしました」
「もういいですから」
もう、ダメだろうな。「嫌われたまま」は嫌というのは、自分が納得したいだけの自己満足だし。世の中って思い通りにならないものなんだな。そんな風に考えていたそうです。
「最後に自分なりの誠意を伝えよう」。こうして4回目の訪問をします。
師匠が店のドアを開けると、いつものように奥から女性オーナーがやってきました。
そして誠意は奇跡を起こす

師匠は女性オーナーの目を見て言いました。
「私が担当する限りは、今後、ミニーさんに不愉快な思いは絶対させません!」
女性オーナーは静かに聞いておられましたが、やはり「あなたの会社とはお取引できません。もう決めてますから。」と言い、店の奥に戻っていったそうです。
自分の思いを伝えたことで少しスッキリした気持ちになった師匠。その後、2、3件を訪問して会社に戻ると、経理の先輩女性が驚いた顔で師匠に話しかけてきました。
「さっき、ミニーさんから電話があって、ガイドブックの一番大きなサイズの広告出しますって!!」
「えっ!嘘でしょ」
予想していなかった出来事に、師匠は驚きましたが、ミニーさんとのいざこざを知っていた会社の先輩たちはもっとびっくりしていたそうです。そして高揚感に包まれたのを今でも覚えているとのこと。
さっき顔を出したばかりなのに、うれしくてすぐにミニーさんの店へ出向いた師匠。
「ありがとうございました。ありがとうございました」
「あなたなら信用できるって思ったから」
その後、ミニーさんとは10年以上も取引をさせてもらっているのだとか。営業としての売上がピンチの時も、即決で助けてくださったりも。「あなたがいる限りは永久契約で広告を出します」とも言ってもらった師匠。
なんだか、ドラマみたいな話でしょ。でも実話です。
結局相手の心を動かすものとは

冒頭に「クレームは最大のチャンス」と書きました。
思い返せば、私自身もクレームを起こしてしまったお客様とはすべて、取引額が飛躍的に増えたり、信頼関係が増したりしています。
よく、世の中のクレーム対応の本には「まずは相手の話を聞く」とか、「信頼関係を深める」とか「謝る部分、謝らない部分」などテクニック的な側面を説明しています。
それはその通りなのですが、そんな機械のような理屈を身に付け、相手に対応することが大事なのではなく、本当に大切なのは〝自分自身の誠意〟。たったこれだけです。
迷惑を掛けたら言い訳をせず、「ごめんなさい」と素直に謝る。
子どもは謝れるのに、大人が謝れないってなんだか格好悪いなって思います。
経営者としての経営視点も確かに大切なのですが、人間としての素直さ、正直さだけは私は貫いていきたい。
その姿勢こそが唯一、相手の心を動かせるのだと信じています。
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